ソフトウェア技術者向け情報

1.コンピュータ用語基礎知識
・・・コンピュータ業界で使用する用語・・・

 本稿は、諸氏の辞書代わりを目的としていますが、同時に、将来のシステム設計のありようを模索するときに使用させていただく基礎用語をも紹介しています。 特に、記号論理分野の用語については「集合」と「コンピュータのための文章表現」にて解説いたします。 (統計学や数学を専攻された諸氏においては、推測・検定分野の初歩が頻出いたしますので、まことに、恐縮です。)

▼ 本稿の内容情報
1-1.コンピュータの生い立ち
 ・・・21世紀現在のコンピュータを確立した基本理念について・・・
1-2.コンピュータの構成
 ・・・近年、一般的に使用されているコンピュータ関連の用語・・・
1-3.コンピュータの発展
 ・・・コンピュータの発展にともない関連用語も変遷してまいりました・・・


1-1.コンピュータの生い立ち

 今日のコンピュータは、理論的に、二つの発明=発見によって成立しています。 コンピュータは、数多くの科学的技術に支えられていることはもちろんですが、ここでは、技術者諸氏に直接関わる二つの業績について年代順に解説しておくこととします。

(1) 1937年
 この年、シャノン(注1)は、MIT(マサツーセッツ工科大学)の修士論文として、「リレーとスイッチ回路の記号論的解析(注2)」を提出しました。 その内容は、2進数を使用することで、ブール代数(注3)と3種類の回路(「AND」、「OR」、「NOT」)を結び付けて、あらゆる論理計算が可能であることを証明したものでした。
 これによって、コンピュータは、2進数をを使用した簡単な回路の組み合わせで作成可能なことが明らかになったのです。 当然のことながら、この論文以降、コンピュータ(電子計算機)の開発は10進数を基礎とした研究から、2進数を使用する研究へと大きく変貌しました。

帰結-1:
 技術者諸氏は、「2進数」の仕組みについて理解が必要です。また、コンピュータ業界では、桁数が多くなる「2進数」を簡単に表記するために「16進数」を利用していますので、あわせて慣れておく必要があります。
本稿「ソフトウェア技術者向け情報-2.コンピュータのデータ記述」にて解説いたします。

帰結-2:
 技術者諸氏は、基礎的なブール代数についての知識が必要です。普段、なれ親しんでいる計算とは若干異なる内容を含みますので、しっかり理解することが肝要です。 また、「ソフトウェア技術者向け情報-3.コンピュータの文章表現」においてもブール代数は、非常に重要です。
 本稿「ソフトウェア技術者向け情報-4.コンピュータの計算方法の中で、「集合」として解説いたします。

注1:
 シャノン(Claude Elwood Shannon)は、情報理論の創始者と言われています。

注2:
 シャノンの修士論文名:'A Symbolic Analysis of Relay and Swiching Circuits'

注3:
 ブール代数('Boolean algebra')は、19世紀の中頃に確立した、ブール(George Boole)らの研究に基づく集合の演算です。

(2) 1946年
 ノイマンをリーダとする開発グループは、ノイマン型(注4)と呼ばれるコンピュータのアーキテクチャーを発表しました。 現在のコンピュータの形式を決める基本的な要件として定義付けられています。
これは、プログラムを内蔵する方式のデジタルコンピュータで、主に以下の要素から構成されます。
「構成要素」
・ 中央処理演算装置(CPU)・・・理論的には、制御装置と演算装置
・ 記憶装置・・・アドレス(格納位置、番地)を使用して情報を記憶する装置
・ バス・・・演算装置と記憶装置を接続する装置(昔はケーブルでした)
 これらで構成されたコンピュータは、命令(プログラム:処理をする手順)と情報(データ:処理をする対象)を記憶装置の内部に保存して実行する形式です。
実際の第1号機は、1949年にイギリスで開発されました。(EDSACと命名されました。)
本稿「1-2. コンピュータの構成」にて大まかな構造を解説いたします。

注4:
 ノイマン型:「von Neumann architecture」の通称(貴族・豪族の家系なのでしょうね!)。

帰結-3
 技術者諸氏は、コンピュータの構成とその発展の歴史について、概略で十分だと思いますが、用語例を知識に加えておくと便利です。(年配の方と会話する時に役立ちますように)
本稿「1-3.コンピュータの発展」にて略歴を解説いたします。

1-2.コンピュータの構成

(1) コンピュータの構成機器に関する用語
 今日のコンピュータを構成する主な部品は中央処理演算装置と記憶装置です。中央処理演算装置(以下、CPUと略します。)は、コンピュータ事態をコントロールする制御装置、および、さまざまな計算を実行する演算装置の二つの機能を持っています。(参考を参照)
また、ユーザとコミュニケーションをとるのが入出力インタフェースと呼ぶ部品です。
これらの部品はバスとよばれる回路で結び付けられます。 最近、普及してきたモバイル端末(タブレット端末とも呼ばれます)では、ディスプレイは出力と入力用の二つの機能を兼任しています。
コンピュータ自体の呼称も時代ととに変化しています。一般的に机上に設置可能な小型のコンピュータをPCと呼びますが、かつては某メーカの製品名が一般化したものです。
*ネットワークに接続している場合の呼び方
 サービスを提供する側のコンピュータを「サーバ」、サービスを受ける側のコンピュータを「クライアント」もしくは単に「PC」と呼びます。
*大きなコンピュータの呼び方
 CPUが複数搭載された、大型で高速処理が可能なコンピュータを「スーパー・コンピュータ」、「メインフレーム」、最近では「エンタープライズ・サーバ」などと呼んでいます。 (メーカごとにカタログに書いてあるだけです。念のため)

(2) コンピュータの起動に関する用語
 コンピュータ本体のような目に見える物をハードウェア、コンピュータの中で実行される目に見えないものをソフトウェアと呼びます。また、ハードウェアを動作させる(直接実装すると呼びます)ソフトウェアをファームウェアと呼びます。
(2)-1 電源の投入
ハードウェア(機械)であるコンピュータは電源が投入される(電源スイッチをON>にする)と、「ROM」という記憶装置に格納されている「起動プログラム」が始動します。起動プログラムは、BIOS(Basic Input / Output System):通称バイオス、ファームウェア(機械を動作させるシステムに分類されます)を起動し、入力装置(キーボードやマウス)、出力装置(ディスプレイやスピーカ)を使用できるようにします。
その後起動プログラムはOS(Operating System:システムを動かすためのソフトウェア、基本ソフトウェアとも呼ばれる)を起動します。
(2)-2. OSの働き
OSは、ユーザとコンピュータを会話させる目的で作成されたソフトウェアです。 OSには、パソコン上で稼働する「Windows(XP、7、8など)」や「MacOS」、サーバ上でよく使用される「UNIX」や「LINUX」(と、派生商品)、メインフレーム用にメーカ別(機種ごと)に作成された「専用OS(zOSなど)」が存在します。
OSが起動完了し常駐すると、コンピュータはユーザにとって、使用可能な状態になります。
近年のOSは、多くのサービス用アプリケーションを含んでいます。インターネットを閲覧するIE(インターネットエクスプローラ)やメモ帳、メールソフトなどがコンピュータが視覚的をかつ簡単に利用できるようになっています。
(2)-3. コンピュータで稼働するソフトウェア
実際にコンピュータを使用して作業を行うためには、専用のソフトウェアを使用可能にしておく(インストールと呼びます)必要があります。 OSはもとより、OSがサービスとして提供しているプログラムにメモ帳やインターネットエクスプローラ(ブラウザ)などがあります。市販の代表的なソフトウェアでは、ワープロや表計算などがよく使用されています。 また、パソコンの使用者自身がソフトウェア(プログラム)を作成して使用することも可能です。(エクセルのVBAなど)

参考:ノイマン型コンピュータ
pc-kouzou-01 

1-3.コンピュータの発展

(1) 初期のコンピュータ処理
 日本の大企業がコンピュータを本格的に導入しはじめたのは1960年代です。 その頃のコンピュータは、通信回線に接続しておらず(オフラインといい、コンピュータが孤立しているのでスタンドアロンともいう)、プログラムやデータを紙カードや紙テープでコンピュータ室に持ち込み、プリンタから出力された印刷物を使用していました。
コンピュータの処理では、プログラムの実行をすると、結果が出るまで人間の介入ができませんでした。 そのような利用形態を一括処理またはバッチ処理といいます。 1970年代頃になると、遠隔地のコンピュータ間でデータを伝送できるようになりました。 当初は、ファイルをそのまま伝送するだけでしたが、そのうちにTSS(Time SharingSystem:時分割方式)という技術により、1台のコンピュータを複数の端末(ワークステーションや遠隔端末:CPUを実装していない入出力専用)から共同利用できるようになりました。 ここから、端末がPCへと発展し、現在のクライアント/サーバ環境へと発展してきたのです。
  *用語の対(現在でも使用しています)
    オフライン    vs    オンライン
    スタンドアロン  vs    複数構成(LANなどのネットワーク構成)
    一括処理     vs    対話処理
    バッチ処理    vs    リアルタイム処理
(2) ダウンサイジング
 パソコンは急激に安価になり性能が向上した1980年代末になると、従来の大型コンピュータによる集中処理よりも、多数のパソコンをLANで接続した分散処理へ移行するようになりました。 その動向をダウンサイジングと呼んでいました。 ダウンサイジングは多様な局面を持っており、いろいろな用語を使用しています。
(2)-1 ダウンサイジング初期
従来の大型コンピュータ(汎用コンピュータ,メインフレームともいう)から、パソコンやサーバなどより小型のコンピュータに移行したことです。
(2)-2 分散化
1台の汎用コンピュータで集中処理をすることから、利用者の近くに設置した多数のサーバに分散して処理をすることです。
(2)-3 オープン化
従来の汎用コンピュータでは,それぞれのメーカが独自の仕様を用いていました。 したがって、異なるメーカのコンピュータ間ではソフトウェアに互換性がなかったり、回線接続に制限があったりしました。 それに対して、パソコンの場合はOS(前述)が同じであれば、ソフトウェアに互換性があり、また、OSが異なっても回線接続が可能です。 このように、個別仕様ではなく標準的な仕様に基づくことをオープン化といいます。 オープン化が進むと、価格以外の差別化ができなくなるので、パソコン価格が急激に安価になったのだとも推測できます。
オープン化した環境でのシステムをオープンシステム、以前からの汎用コンピュータ環境でのシステムをレガシーシステムということもあります。
(2)-4 マルチベンダ化
オープン化の進展により、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、アプリケーションなどのそれぞれの専門領域で優れたベンダが出現します。 それにつれて、レガシー時代のように1社のベンダと取引するのではなく、多数のベンダとの取引が行われるようになりました。

コンピュータ用語の基礎知識-以上


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