今日はロシアの作曲家
アレクサンドル・スクリャービン(1872.1.6〜1915.4.27)の150回目の誕生日です。
19世紀末から20世紀初頭、西洋音楽が調性を持たなくなり、現代音楽へと大きく変動していった時代に、その先駆者の一人として数々の作品を残したスクリャービン。彼の作品は複雑でありながら非常に洗練され、美しく神秘的な妖しさを湛えています。この魅力はどこから生まれたのでしょうか。
優れたピアニストでもあったスクリャービンの作品には、バッハのポリフォニー、ショパンの旋律美、リストの超絶技巧、ドビュッシーの和声と色彩感などの影響が見られます。また神智学に傾倒し、自分は救世主であると信じ、水の上を歩こうとしてみたり、雷雨を呼ぶことができると言ってみたり、未完により上演されることはなかったものの、晩年まで13年ものあいだ構想を練っていた作品は、初演後には宇宙の壁が崩壊し世界は非物質化する…と信じていたり。そんな思想と独特の感性が、彼の音楽から調性の枠を外し、「神秘和音」という美しい不協和音を作り出しました。
彼が追求していたもの、音楽で作り出したエネルギーによって成し遂げたかったもの、傾倒していった特異な世界。それは彼が見ていた宇宙や天地創造のような世界観だったのでしょうか。
21歳から20年にわたり書き綴られていった第1番から第10番のピアノ・ソナタには、彼の私生活や思想が色濃く反映されていて、作曲された時期によってその作風は大きく変化していきます。彼の人生とその背景を想いながら、スクリャービンの「音」に浸ってみてはいかがでしょうか。