ピアノ教室 ＜Pianoforte＞〜ピアノフォルテ〜は 江東区豊洲にある 個人ピアノ教室です

音楽史上、「標題音楽」の分野に於いて多大な影響を与えた作品「幻想交響曲」の作者エクトール・ベルリオーズ（1803.12.11〜1869.3.8）は、フランスロマン派の作曲家です。

開業医の家庭に育ったベルリオーズは、子供の頃から音楽に強い関心を持ちながらも、専門的な音楽教育を受ける環境には恵まれませんでした。大学は親の希望に沿って医学を専攻しましたが、音楽への情熱は止まず、両親に反対されながらも後にパリ音楽院へ入学し、音楽家への道を目指します。

24歳の時、ベルリオーズはイギリス人の人気女優ハリエット・スミッソンに恋をします。しかし、人気女優と無名の学生。激しく募る思いを何度もハリエットに伝えますが、ついに思いが通じることはありませんでした。彼にとって辛く苦しいこの失恋の体験が、1830年、後世に伝わる代表作「幻想交響曲」として世に出ることになったのです。

原題に「ある芸術家の生涯の出来事」と記された全5楽章から成るこの交響曲は、各楽章に標題が付けられ、明確な背景が示されています。ベートーヴェンの「田園」のように情景のイメージを表したものは有ったものの、当時は歌曲やオペラ以外の作品にタイトルが付けられることは殆ど無く、ましてや作曲家自身の体験や感情を言葉のない音楽へ変換するという革新的な手法によって書き上げられたこの音楽物語は、後進の作曲家たちに多大な影響を与えました。また、特定の人物（ハリエット）を表すフレーズを作り、全曲を通して様々なシーンで何度も登場させ、そのフレーズにキャラクター性を持たせる「固定楽想（イデー・フィクス）」という新たな書法を試み、これは現代の映画音楽「ジョーズ」や「ゴジラ」のテーマなどにも取り入れられています。

ベルリオーズの人生に於いて運命の女性となったハリエット。後に2人は結婚することになりますが、幸せは長くは続きませんでした。僅か数年で別居の末ハリエットには先立たれ、2人目の妻と子供にも先立たれ、150年前の今日、彼の激しく孤独な人生は、65歳で幕を閉じることになったのでした。