ベヒシュタインでドビュッシーを弾く 2019.8.30 fri.
「全てのピアノ曲はベヒシュタインの為だけに書かれるべきだ」という言葉が示すように、ドビュッシーから絶大な支持と信頼を得ていた名器ベヒシュタイン。リストもこの楽器を大変気に入っていたことはよく知られています。
先日ベヒシュタインを演奏する機会があったので、ドビュッシー2曲とリスト、そしてショパンの作品を選曲しました。
今回弾かせて頂いたピアノは羽根のように軽いタッチで、弾き始めはあまりの寄る辺なさに面喰うほどでしたが、音の伸びと透明感のある響き、柔らかく憂いのある音色、そして細密なコントロールを要するハーフタッチを見事に拾い、色彩のコントラストを細部まで表現し美しいグラデーションを奏でられるベヒシュタインは、やはりドビュッシーの作品を奏でている時が一番心地よく、音そのものを楽しみながら演奏することができました。
もちろん、細部まで全てのタッチを拾うということは、寸分の狂いであっても全て音になるということ。多彩な表情を持つごまかしの利かないこのピアノを弾きこなせるようになるには、まだまだ時間がかかりそうです。